2016年4月18日月曜日

『リップヴァンウィンクルの花嫁』、歪みまくった怪作コメディ。

岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』、
かなりの怪作でした。面白かった。
監督は他人の作品を引き合いに出されるのは嫌でしょうけど、
自分にとっていかに予想外だったかを
説明するために言わせてもらうと、
トッド・ソロンズが『マルホランド・ドライブ』を撮ったみたいな
突拍子もないダークコメディという印象。
とりあえず冒頭から不穏な空気しか漂わず、
すき間すき間に悪意に満ちたギャグや小ネタが
ぽいぽいと挟み込まれてくるので
全編を通じて本当に油断がならない。
綾野剛の役柄にまつわるメタ構造も凄まじくて
「物語=作り物」という前提を幾重にも張り巡らし、
自分は「運命の創造主」にまつわる考察のようにも感じました。
黒木華は主体性のない女をみごとに演じていて、
ときたま突拍子もない擬音を使うときの発声がいちいち素晴らしい。
和田聰宏さんが今回もクソみたいな男の役で出ていて、
和田さんはいつもに増してクソみたいな男っぷりが板についていて
ハンサムのとても正しい使い方だと思います。
あと岩井監督は昔からですが、
作品をひとつのジャンルで括らせてはくれない。
本作を感動的な女子の成長ストーリーと取る人もいるだろうし、
ドSな変態監督のヒロインイジメにも見えるし、
人生の無常を対極的に見つめるかと思いきや、
とんでもないはだか祭が始まったりする。
右に左に振り回されて、混乱させられるのも込みでの面白さ。
ただ、3時間の上映時間はもう物理的につらい。
上映前にトイレに行ったにもかかわらず
2時間くらいは尿意を我慢していた気がする。
終始どこに転んでいくかわからない物語だけに
どうしても中座するタイミングが見つからない。
途中で休憩をはさんでくれるか、
入院した時にあまりにも快適だった尿道カテーテルが
もっと簡易化できるのならば、
あらゆる劇場シートに導入するべきではないかと
本気で思う次第です。尿道カテーテル最高。
と話題が逸れましたが、
岩井監督≒綾野剛というこの映画における関係性と
現代の観客はフィクションとどう向き合うのか
という命題については、もうちょっと考えてみようと思います。