2016年10月8日土曜日

深田晃司監督による小説版『淵に立つ』の話。

ああ、今日は『淵に立つ』の公開日なのか。イヤな空気を淡々と浴びせられ続けるような映画ですが、怖いくらい面白いです。
 
そして深田監督が執筆した小説版がとてもよかった。なにがいいって文章がよかった。簡潔で押しつけがましくなく、丹精で美しかった。それでいて、後半になるにつれて話者の人格が漏れ出るような綻びが出てきて、完璧な世界観がちょっとイビツになる。それが物語の揺らぎとシンクロしている気がする。
 
いや、気がするだけで全然そんな意図じゃないかも知れないけれど、完璧じゃないことが重要な気がしたのです。映画の行間を補足するサブテキストのようで、やっぱり映画で目にする役者の演技と小説の人物像がイコールでないのも面白かったですし、終盤の展開も映画とは違って、小説のが当初の構想に近いらしい。
 
カンヌ受賞もあってメディアの露出も随分増えた気がする深田監督ですが、小説家・深田晃司のデビューもちょっとした事件ではないかしら。

 
 
※イビツといえば「ここも?」って思ってしまう意外な箇所でのカタカナの多用。ちょっとご本人に意図するところをお聞きしたいです。
 
 
小説「淵に立つ」
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