2019年3月14日木曜日

イーストウッド監督『運び屋』の、夫婦の最期のやりとりのこと。

ネタバレ話をどうしてもしたいのが、仕事として記事化するほどの分量でもないので久々にこちらに投稿。

【警告】重要シーンのネタバレをします。

2018年12月13日木曜日

ハル・ハートリー《ロング・アイランド・トリロジー》デジタルレストア版、劇場公開に寄せて。

【激しく平身低頭しながらの告知】
いよいよ明日14日から劇場公開が始まるハル・ハートリー監督《ロング・アイランド・トリロジー》デジタルレストア版。ここまでたどり着くのに、これほどトラブルが頻発し、多くの方に多大なご迷惑をかけ、なおかつ支えてもらっていることに、もう感謝と恐縮の気持ちしかないです。
 
そして今年の春に、「ハル・ハートリー復活祭」という聞こえようによっては随分と失礼なネーミングの催しを始めたわけですが、今後どういう流れになろうとも、今回の劇場公開が一番の山場であり、クライマックスになるだろうと思っております。客観的に考えても、今回の三部作(『アンビリーバブル・トゥルース』『トラスト・ミー』『シンプルメン』)ほど、ハートリーの人気作が並ぶことはないと思うので。
 
劇場公開は、東京、大阪、横浜、京都、刈谷、神戸、ちょっぴり松本と今後はあちこちを回ります。クラウドファンディングで実現した2種のBOXセットも販売中です。
 
90年代に人気を博したハートリーが(他の多くの映画作家も)2000年代になって一度消えてしまった理由はいろいろありますが、ファンだと思っていた自分たちの怠慢もあったと思っています。自分にとって、このハートリーにまつわる一連のことは、「自分たちは映画をどこまで次に繋げていけるのか?」という切迫したチャレンジであるとも思っています。
 
そして、新しい世代にも響く価値と魅力がある作品群だと信じているので、どうかゴリ押しすることをお許しください。自分の立場は一介のライターでしかありませんが、なぜだか配給っぽいことに手を出して、思いもしなかった遠いところまで来てしまい、戸惑いと不安の中のわずかな希望を引っ掴んでかろうじて立っております。ほとんど泣き落としで恐縮ですが、どうかひょろっと映画館に立ち寄ってやってください。東京近辺の人は、うわさの新劇場アップリンク吉祥寺の偵察がてら、ちょうどいいんじゃないですかね。そして直接面識のある人は、どうか村山へのご祝儀だと思ってハル・ハートリー作品を観に行ってみてください!
 
※今回上映されるのは、三作とも監督の監修によるデジタルレストア版。新規日本語字幕です。
 
※あと劇場パンフが全部で96ページあるハートリー自身が執筆した回想録なので、超お得だと思います!
 
アップリンク吉祥寺      12月14日~
第七藝術劇場/シアターセブン 12月29日~
横浜シネマリン        1月19日~
出町座、刈谷日劇       2月予定
元町映画館          3月予定

《ロング・アイランド・トリロジー》日本語公式サイト
https://longislandtrilogyjp.jimdofree.com/


©Possible Films, LLC

2018年7月7日土曜日

死刑制度はまったく人間の手に負えないので廃止すべきだと思っている理由。

死刑制度について思うことを書きます。最初に言っておくと、自分はこの制度に反対の立場です。多くの人が、是なのか非なのか、いろいろと考えてしまうタイミングだと思います。自分も長い間、なかなか答えが出せない難しい問題だと思っていました。   以下に書くことは自分の体験ですが、誰かを説得する気はありませんし、激しい議論を吹っかけたいわけでもない。ただ、もしかすると、自分がそうだったように、誰かしらの参考になるかも知れないと思うのです。  
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  話は15年前にさかのぼります。映画監督のアラン・パーカーが『ライフ・オブ・デヴィッド・ゲイル』という新作のキャンペーンで来日し、取材をしたことがありました。   『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』は、死刑反対運動をしている女性が殺害される事件が起きて、デビッド・ゲイルという死刑廃止論者の男が容疑者となるミステリーです。   映画の内容は観ていただければいいとして、自分はアラン・パーカーにある質問をしました。「この映画は、死刑制度のシステム的な欠陥をテーマにしていますが、人が死をもって人を裁くという人道的な側面についてはどうお考えですか?」と。   アラン・パーカーの答えは明快なものでした。   「人道的な問題は、優先順位としては高くないと思っています。問題は、人間がシステムを運用する以上、必ず間違いを犯す、ということで、死刑はその間違いを正す可能性を永遠に奪ってしまうものだから、私は反対の立場を取ります。実際、死刑制度にまつわる問題で最も多いのが冤罪なのです」と。   「人道的な問題の優先順位は高くない」という言葉は、理屈ではわかっても、当時の自分にはどこか納得できないものがありました。ですが、次第に、人道的か否かという考え方は感情論でしかなく、明確な基準を持つことは難しいと思うようになりました。また、あまりにもケースバイケースにすぎて一概に判断できることではない。   ただ、パーカーが言った「人間は必ず間違いを犯す」という点についてはまったくその通りで、なんの反論も浮かびませんでした。そして法のシステムは、その間違いに可能な限り左右されない形であって欲しいだと考えます。   アラン・パーカーがいった言葉について考え込んで、自分なりに出た答えは、「人間には、死刑制度を適切に運用するほどの能力はない」ということでした。死刑とは極刑であり、文字通り執行してしまうと取り返しがつかない。死刑制度が「取り返しがつかない間違いをしでかすシステム」であるのなら、それは捨てるべきではないか。   松本智津夫らを擁護する気は一切ありません。感情的には、また道義的には、死刑になっても仕方がないと思っています。   ただ、死刑制度そのものが不完全で、取り返しのつかないものなのである限り「死刑は選択肢からなくすべきである」というが自分の考えです。「死刑にふさわしい罪人を処罰するために、たまに間違って殺される囚人がいても仕方ない」という考え方は絶対におかしいと思うからです。ある制度を支持することは、その制度のもたらす結果について責任の一端を負い、覚悟を持つことだと思うのですが、この責任は自分には絶対に負えない。
  「死刑制度は、人間の手に負えない」 自分が反対する理由はそれだけです。死刑が残酷であるか、非人道的であるかについては、それぞれの価値観や倫理観、実体験などによっても変わるでしょう。自分自身、確固たる答えはありません。ただ法のシステムに基づく処罰には、厳然たる理由付けがないといけないでしょう。
  だからこそ、死刑を承認した法務大臣が、会見で事件被害者・遺族・関係者の苦しみについてコメントし、彼らのために死刑が必要であったように語るのは非常に違和感がありました。法治国家の法務大臣である以上、執行の理由は、100%法律と法律が定めた手続きによってのみであるべきです。死刑の執行を命じる当事者が、倫理観や感情論をふりかざして死刑制度を肯定するのなら、それはもはや「復讐」の代理人でしかありません。   今回のオウム真理教元信者7名の死刑執行については、大きな驚きと不安を感じているので、自分の意見を整理するためにも、文章にまとめてみました。人目に触れる場所に置くことで、わずかな人数だったとしても、なにかしらの参考になれば幸いです。

2017年10月1日日曜日

「昔のIMAXはすごかった!」という旧世代の繰り言を証明してくれるエキスポシティの『ダンケルク』の話

大阪エキスポシティのIMAXレーザーで観た『ダンケルク』のことを書いておきます。
※長文注意   以前にいささか苦言を呈した『ダンケルク』という作品の評価については脇に置きます。はっきり言えるのは、昔、海外の専用劇場や新宿の高島屋やポートピア博覧会のダイエー館でフィルムのIMAXを体験したことがある人には、本当に心からエキスポシティで『ダンケルク』を観て欲しいということ。   「フィルムだのレーザーだの言うけれど全部IMAXじゃないの?」と思う人は、ググってもらったらいろいろ違いを説明しているサイトがあるはずなので割愛します。専門的なことをすっ飛ばして言うと、おそらく昔の(フィルム時代の)IMAXを知っている人は、今のデジタルIMAXの劇場に行っても「こんなもんだっけ?」と思っていたはず。   随分昔の記憶と比べているから思い出補正されているのかな、なんて考えつつも、あの「圧倒的」だったIMAXはどこに行ってしまったのかと、自分は思いましたし、ずっと思ってました。   例えばかつて新宿の高島屋にあったIMAXは、3フロアをぶち抜きで劇場が作られていて、スクリーンの高さも3フロア分あって、その前に急こう配の客席が設えられていた。画面サイズを気にするまでもなく、視界のすべてがほぼスクリーン状態だった。   フィルムのIMAXの縦横比は1.43:1。普通の映画よりも縦が長くて、印象としては正方形に近い。それが目の前の巨大な壁いっぱいに映されると、スクリーンの枠というものをほとんど意識しなくなる。   普段、自分たちは映像を枠単位で見ていると思う。ビスタであれシネスコであれスタンダードであれ、四角い額縁の中で動いている画の集合体であり、映像がキレイだった、というのは、画質のことや何が映っているかというだけでなく、四角いキャンバスの中にみごとにレイアウトされていて美しい、という意味でもあった。   その常識が、フィルムのIMAXだと通用しないのです。目の前に広がっているのは確かに映像なのに、「枠」という感覚が失われることで、そこに空間そのものが広がっているように感じるのです。これは3D映画がもたらすギミック的な立体感とは全く別のものなのです。   で、『ダンケルク』は、監督のクリストファー・ノーランがわざわざフィルムのIMAXを基準にして作った映画なわけです。ただ世界の現状として、フィルム上映ができるIMAXシアターはもはやわずかな数しかない。じゃあせめてノーラン監督にとってベストの状態に近い1.43:1の縦横比で、なおかつ巨大スクリーンで映写されている施設は、国内では大阪のエキスポシティのIMAXレーザーしかないのです。   自分は『ダンケルク』より前にIMAXレーザーで上映された映画を2本観ていますが、どちらも1.43:1よりも横長のサイズで、上下に黒みが映っていて、劇場のマックスのポテンシャルを感じられたことが一度もなかった。いや、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』は一部だけ1.43:1のフルサイズになったけれど、それもわずかな時間しかなくて拍子抜けだった。   『ダンケルク』の場合、全体の7割ほどがIMAXレーザーの巨大スクリーンを覆いつくすフルサイズで作られているので、印象としてはほぼほぼ1.43:1の映画だと言っていいと思います。   で、『ダンケルク』の上映が始まって、目の前の巨大スクリーンいっぱいに映し出された瞬間に、昔、フィルムのIMAXを観た時の衝撃がよみがえってきた。ダイエー館の鮫の映像で、母親が悲鳴を上げた記憶がよみがえってきた。映っている、というより、そこにある、としか言いようがない存在感。IMAXが一度日本から消えて、デジタルIMAXとして戻って来た時には味わえなかったあの感覚。もう表現として目指してるものが根本的に違う。「映画」じゃなくて「IMAX」なんですよ!って、抽象的で申し訳ありませんけども。   極論を言うと、現在のIMAXのほとんどは確かにスクリーンが大き目で高画質ですが、あくまでも普段見てる映画体験の延長上でしかない。だからこそフィルム時代を知る古い人間は「あんなのIMAXじゃねえよ」なんて内心では満足できずにいたし、「じゃあどれだけ凄いのか見せてみろよ!」と言われた時に返せる答えが「エキスポシティの『ダンケルク』を観て!」なのです。   「でも『ダンケルク』じゃなくてもよくない?」と思う人には、いや、上映できる劇場がほとんどないのにわざわざ1.43:1のIMAXフォーマットで作るような酔狂な映画ってほとんど存在してなくて、『ダンケルク』の次にいつ観られるかなんてわからないんですよ、と説明しなくてはなりますまい。
  とはいえ縦が長いIMAXレーザーの『ダンケルク』に戸惑ったという人もいるようだし、普通の映画館やデジタルIMAXの劇場で観て「充分面白かったし感動した」という人もいる。でもこれは映画の良し悪しの話ではなく、「IMAXってこんなにすごいんだよ!」っていう話なので、どうかエキスポシティでやってるうちに、観に行ける人は行ってみてください。   自分は関東から深夜バスで平日に片道3000円かけて行きましたが、その価値は間違いなくありました。もちろん懐に余裕のある人は新幹線でどうぞ。   ※IMAXレーザーの映画館は、大阪以外には2019年に池袋にできる予定だったはず。あとソウルと台北にもっとデカいのがあります。   追記:『ダンケルク』の初見の時は、ハンス・ジマーの音楽や音響設計が大仰で苦手に感じたのだが、IMAXレーザーのスケール感だと大仰とは感じられず、映像とちゃんと釣り合っていた印象に。ああ、この音楽も本来はフィルムのIMAX仕様で作られていたかも、と思い直した次第です。

2017年6月21日水曜日

ハル・ハートリーの「ヘンリー・フール」三部作、クラウドファンディングの詳細を日本語に訳してまとめました。

【「ヘンリー・フール」三部作が初めて観られるチャンス!】
 

90年代のインディーズシーンを席巻した映画監督ハル・ハートリー(公式サイト)が、『ヘンリー・フール』(1997年、1999年日本公開)と続編の『フェイ・グリム』(2006、日本未公開)、『ネッド・ライフル』(2014、日本に公開)からなる「ヘンリー・フール三部作」のBOXセットを自らの映画会社POSSIBLE FILMSからリリースするためにクラウドファンディングを募っています。

自分がこのプロジェクトに成功して欲しい一番の理由は、日本ではVHSテープしかリリースされていない『ヘンリー・フール』と、日本未公開の『フェイ・グリム』『ネッド・ライフル』が、日本語字幕が付いた状態でHD画質でリリースされるからです。
 
『ヘンリー・フール』は自称・天才作家のヘンリーと、詩人の才能を開花させるゴミ収集人サイモンの交流を描いたヒューマンコメディでした。サイモンの姉でヘンリーと結婚したフェイがヨーロッパでヘンリーの行方を探す『フェイ・グリム』と、ヘンリーとフェイの息子ネッドが不幸の現況である父親を殺そうする『ネッド・ライフル』は、同じキャラクターによる繋がった物語でありながら、日本では劇場公開もソフトリリースもなく、どんな内容なのか噂を聞くだけの状態が続いてきました。
 
今回、ハートリーは日本のファンにも「ヘンリー・フール三部作」を楽しんで欲しいと、日本語字幕(及び仏、独、西、英の5か国語)を付けた状態でのリリースを望んでいます。「日本の人に観て欲しい」って、そりゃこっちだってそうだよ! ずっと観たいと思ってたよ!
 
【ハル・ハートリーが、日本語字幕を付けるための資金を募っています!】

今回のクラウドファンディングの〆切は7月13日(日本時間22時37分)。目標額に達しなくてもBOXセットはリリースされるけれど、資金が集まらなかった場合に日本語字幕が付けられるかどうかは危ういところだそうです。
 
しかし、日本から100ドル以上の援助者が100人集まれば、ニーズがあると判断して字幕を付けるとハートリー本人が言っています。100人のファンの声があれば、初めて日本語字幕で「ヘンリー・フール三部作」が観られるってことですよ。マジで。

以下、状況を箇条書きにします。

・クラウドファンディングが成功すれば、日本語字幕付きの「ヘンリー・フール三部作」BOXセットがリリースされる。
・もしファンディングが失敗しても、日本から100人以上が100ドル以上の参加申請をしていれば、日本語字幕は付く。
・クラウドファンディングに100ドル以上の参加をすると(申し込んだプランに応じて)DVD BOX+ハートリーの新作CDかBlu-ray BOX+CDが、特典として送料無料で送られてくる。
・参加しても課金されるのは、クラウドファンディングが成功した時のみ。目標額が集まらなかった時はクレジットカードに課金はされない。
・今回のプロジェクトが成功すれば、『トラスト・ミー』などの過去作もすべて日本語字幕付きでリリースする予定である。

ハートリーの映画のファンとして、ぜひ実現するよう応援したいのですが、クラウドファンディングのキャンペーンを行っているKickstarterが海外のサイトで(今年中に日本語バージョンがローンチされる予定)、英語のサイトだから何が書いてあるのかわからない、どう参加していいのかわからない、という方も多いようです。
 
なので、クラウドファンディングの募集ページを片っ端から日本語に訳してみました。どういう企画なのか? ハートリーの意図はどこにあるのか? 今後の展望は?といった疑問に答えてくれるかと思います。
 
クラウドファンディングのサイトはこちら(英語)になります。
 
以下に日本語訳(下手な訳文と多少の間違いはご容赦ください、酷いものはご指摘ください)を貼りますので興味のある方、どうか読んでみてください。
 
また、ファンディングに参加する手続きについては「キックスターター 参加方法」とかで検索するか、Kickstarterの詳しい解説をしてくださっているブログがありましたので、こちらにリンクを貼ります。とりあえずクレジットカードは必要ですね。
 
またどの特典プランを選ぶかは、私見ですがDVDとCDが送られてくる100ドルのプラン”か、“Blu-rayとCDの115ドルのプラン”かの二択だと思います。それ以下だとせっかく日本語字幕が付いたソフトが手に入らず、あまり参加する意味がないですし、発売されてから注文すると送料が余計にかかります。(※自分は映画ライターですので、今後の資料としてBlu-ray+CDにオリジナル書籍が付く175ドルのプランを選びましたが)

・追記:BOXセットの価格はDVDが100ドル、Blu-rayが115ドル。つまり今回のクラウドファンディングに参加することは、実質的には出資というより、リリースされるソフトをハートリーの新作CDと送料無料という特典付きで定価購入するのと同じです。

・追記2:少額の支援でも10ドルから特典(特製しおりとか)が用意されていますし、ハートリーの気持ちに応えたいという気持ちであれば、金額はわずかでも全然構わないじゃないか、と「100ドルか115ドルの二択」と書いたこと反省しております。1ドルからでも参加できるはず。
 
以下、クラウドファンディングの募集要項です。実際の申し込みはKickstarterのサイトから。
  「ヘンリー・フール三部作」BOXセット、クラウドファンディングサイト
https://www.kickstarter.com/projects/260302407/henry-fool-trilogy-boxed-set/
 
※こちらにハートリーと「ヘンリー・フール三部作」についての記事も書きました。もしよろしければ。
http://www.shortcuts.site/piece/3132

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《キックスターターゴールド:「ヘンリー・フール三部作」BOXセット》

https://www.kickstarter.com/projects/260302407/henry-fool-trilogy-boxed-set/
Kickstarter クラウドファンディングページ
 
↓「ヘンリー・フール三部作」BOXセット、キャンペーン動画
https://ksr-video.imgix.net/projects/2943702/video-787435-h264_high.mp4
 

『ヘンリー・フール』(初のHD画質)、『フェイ・グリム』、『ネッド・ライフル』の三部作が、五か国語字幕付きのセットになって帰ってきます!

「ヘンリー・フール三部作」BOXセット

ヘンリー、帰還せり!


1998年のカンヌ国際映画賞で脚本賞を受賞した(今でも光栄です!)『ヘンリー・フール』が正式にHD画質でリストアされました。長い紆余曲折を越えて作品の権利も自分の元に戻ってきました。そこで私(ハル・ハートリー)は同作と『フェイ・グリム』『ネッド・ライフル』からなる三部作をBOXセットにまとめ、クイーンズに暮らすグリム一家の面々と、友人であり夫であり恋人であり父親である比類なき人物“ヘンリー・フール”が織りなす大河ドラマを改めてお届けいたします。
 
3作品すべてに英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、そして日本語の5か国語字幕が付く仕様です。
 
このファンディングが成功すれば、「ヘンリー・フール三部作」BOXセットはHDリストアを施したコレクションシリーズの第一弾になります。今後3年で全作品に5か国語字幕を付け、私の会社“POSSIBLE FILMS”が手がけた新パッケージでhalhartley.comにて販売する予定です。
 
新たにデザインされた今回のBOXセットには、レアな写真やエッセイを収録した16ページからなるブックレットを封入し、メニュー画面の操作性も向上させました。
 
「ヘンリー・フール三部作」BOXセットは2017年の11月からhalhartley.comで独占販売いたします。BOXセットをキックスターターのクラウドファンディングを通じて先行注文いただければ、100USドル(さらなるご支援も大歓迎です)で送料無料、間もなくリリースされる私の新作CD「After The Catastrophe」と一緒にお届けします。CDには新曲、「ヘンリー・フール三部作」『トラスト・ミー』『The Girl from Monday』『はなしかわって』のサントラ曲の新バージョンを収録する予定です。
CD「After The Catastrophe」
その他にも、BOXセットとオリジナル2018年カレンダーのセットなど、本プロジェクトをご支援いただくための様々なプランを用意いたしました。
2018年オリジナルカレンダー

POSSIBLE FILMSは、これからもますます意欲的な活動を続けてまいります。
 
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私自身、三部作を観直して改めて『ヘンリー・フール』が現代に通用することに驚きました。いつも素晴らしい名優ケヴィン・コリガン扮するウォーレンが、政治活動のビラを手に「アメリカを守れ、アメリカから!」と叫ぶ姿は象徴的です。『フェイ・グリム』は、敵意と無理解が蔓延するようになった911後の世界において、まさにフェイがそうであるように、善良ではあるけれど知識に乏しい平均的なアメリカ人像を反映しています。『ネッド・ライフル』では、和解の道を避けるように、主人公が明快さや平穏を求めるあまり暴力的な衝動に走ります。

3本の映画はまったく違うタイプのエンターテインメントで、それぞれの間に10年近い時間差もあります。しかし3本がまとまることで、私自身が属しているカルチャーの在り様を党派に偏ることなく映し出そうという、私が試みた形に限りなく近づくのです。そして私だけでなく多くの人が、この世の中と立ち向かっていると思っています。

今回この三部作をひとつのパッケージとして送り出せることを本当に嬉しく思っています。

また『ヘンリー・フール』は2017年11月より、アメリカとイギリス以外の国向けにhalhartly.comにてストリーミング公開もします。

DVDは北米と日本向けにNTSC形式、他の国々用にPAL形式で作成し、どこの国でも視聴できるようにリージョンコードは設定しません。

読んでいただいてありがとうございます。私は仲間と共に、これからの30日間、メールやニュースレター、音楽や動画を投稿しながらキャンペーンの周知に努めます。願わくはみなさんにお楽しみいただけて、興味を持っていただけますように。感心が持てない方々もお気遣いなく。それが人生ってものですから。

それではごきげんよう
ハル・ハートリー
2017年6月13日
 
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【過去のキックスタータープロジェクト】
 
私はこれまでに2度、キックスターターのキャンペーンで資金を得ることができました。一度目は2011年に『はなしかわって』を配給するために。2013年には前作『ネッド・ライフル』を制作するためでした。
『はなしかわって』より
『ネッド・ライフル』より
キャンペーンの成功は、キックスターターによって自分が世界のファンと直接つながりながら映画製作をできると確信させてくれました。そして次に私がやるべきことは、これまでに作ってきた映画を、私の作品を楽しみにしてくださった国々の言語を通じて鑑賞できる状況を作ることなのです。だからこそ、私は「ヘンリー・フール三部作」のクラウドファンディングをキックスターターで募集することにしたのです。
 
 
【リスクと挑戦】
 
前回のキックスターターでのキャンペーンに比べれば、今回出資いただくリスクは小さいものです。パッケージされる3本の映画はすでに完成していて、いい状態で保存されています。その意味では、これは決して難しくなく、楽しいプロジェクトだと言えます。
 
ただ、各国語の字幕については新しいチャレンジであり、われわれが鋭意努力しているところろです。翻訳と字幕の作業は、アメリカの業界をリードしている3社と協力して進めており、特にフランス語に関しては、非常に優秀で信頼している翻訳者であるマチュー・ゲルマン氏に依頼しました。またポッシブルフィルムズには世界各地によき友人で、英語と母国語に通じた仲間たちがおり、彼らが各国語の字幕に協力してくれています。

しかし、時には製品に思わぬトラブルが起きるケースもあります。『ネッド・ライフル』のプロジェクトでは、PAL形式のディスクNTSC形式のパッケージに紛れ込む事態が発生しました。20~30人の支援者からディスクが再生できないと報告があり、単なる不良品の問題ではないと認識することができました(今回はすべてのディスクに正しいフォーマットの記載をしています)。

そして当然のことではありますが、言語の翻訳は厳密な科学とは違います。中には翻訳の表現が違うのではという意見の方もいらっしゃるかも知れません。ただ私たちは、それぞれの言語に対して翻訳のグループを作って、最も筋の通った字幕を作ることを心がけています。

【「ヘンリー・フール三部作」BOXセット、クラウドファンディング参加特典一覧】
 
10USドル BOOKMARK
ヘンリー・フール三部作オリジナルしおり

25ドル CD
ハル・ハートリー新作CDAfter The Catastrophe
ヘンリー・フール三部作オリジナルしおり

35USドル CALENDER
halhartley.com 2018年オリジナルカレンダー、しおり

45USドル BOOK
オリジナルブック(インタビューやエッセイを収録)

50USドル CD & CALENDER
新作CD、カレンダー、しおり

75USドル CD, CALENDER & BOOK
新作CD、カレンダー、ブック、しおり

100USドル DVD SET & CD ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、新作CD

110USドル DVD SET & CALENDER ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、カレンダー

115USドル BLURAY SET & CD ※送料無料
ヘンリー・フール三部作Blu-ray BOXセット、新作CD

120USドル DVD SET, CD & CALENDER ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、新作CD、カレンダー

125USドル BLURAY SET, CD & CALENDER ※送料無料
ヘンリー・フール三部作Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー 
 
140USドル DVD SET & BOOK ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、ブック、しおり
 
150USドル THE NED ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック 
 
175USドル THE NED ※送料無料
ヘンリー・フール三部作Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック

250USドル THE FAY ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり

500USドル THE HENRY ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、しおり
『ヘンリー・フール』オリジナル白黒スチール(選択可)

1000USドル SPECIAL THANKS ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり『ヘンリー・フール』オリジナル白黒スチール(選択可)
ハル・ハートリー撮影の俳優ポートレート写真(選択可)

5000USドル SPONCER ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり、白黒スチール(選択可)、ポートレート写真(選択可)
スポンサーとしてお名前をクレジット

10000USドル PRINCIPAL SPONSOR ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり、白黒スチール(選択可)、ポートレート写真(選択可)
プリンシパルスポンサーとしてお名前をクレジット
 
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2017年4月13日木曜日

『夜は短し歩けよ乙女』鑑賞。関西弁にうるさい関西人である自分を呪う。

原作も「四畳半神話体系」も知らないまま観た『夜は短し歩けよ乙女』がたいそう面白くて、劇場の売店に「劇中の絵本、本当にあるんです」とポップがあったのでパンフも絵本も買ってしまう散財っぷり。湯浅政明監督作としてはエナジーとパッションがほとばしる大傑作『MIND GAME』にも連なる豪腕と破天荒さに魅了される。
 
物語の舞台が自分が育ったエリアの京都が大半であり、このカットはあの交差点だなとか、映ってる「餃子の王将」は百万遍店だなみたいなことまでわかる。ただわかる、というだけでなく、よく知っている街がちゃんと描かれていて、荒唐無稽なファンタジーが土地と深く結びついて見えるのが刺激的だった。
 
作品のタイプは違うけれど、『この世界の片隅に』を観た呉や広島のひとは、きっと自分よりももっと広がりを感じながら観ていたのだろうなと思ったり。
 
あと男の方の主人公にだけ特化してみるとテーマ的に先日観た『レゴバットマン ザ・ムービー』と重なる要素が多く、内面的な葛藤をどう映像化するか・・・みたいなところも比較できて興味深かったです。
 
ただ、原作をまったく知らない者としては、京都が舞台なのに誰も関西弁を話さない世界観に馴染むまでに随分時間がかってしまった。ああ、この映画ほど、関西弁にうるさい関西人である自分を呪ったことはない。クセのあるセリフ回しが多いから原作準拠なんだろうと思うし、作品としても成立している。ただ、ここまで濃密に「京都」が描かれている以上、京都弁のバージョンも観てみたい。
 
弭間さん、これ読んでるかどうかわかりませんけど、ソフト化の際には京都弁吹替え版も収録してはくれますまいか、とダメ元でリクエスト。

2016年10月8日土曜日

深田晃司監督による小説版『淵に立つ』の話。

ああ、今日は『淵に立つ』の公開日なのか。イヤな空気を淡々と浴びせられ続けるような映画ですが、怖いくらい面白いです。
 
そして深田監督が執筆した小説版がとてもよかった。なにがいいって文章がよかった。簡潔で押しつけがましくなく、丹精で美しかった。それでいて、後半になるにつれて話者の人格が漏れ出るような綻びが出てきて、完璧な世界観がちょっとイビツになる。それが物語の揺らぎとシンクロしている気がする。
 
いや、気がするだけで全然そんな意図じゃないかも知れないけれど、完璧じゃないことが重要な気がしたのです。映画の行間を補足するサブテキストのようで、やっぱり映画で目にする役者の演技と小説の人物像がイコールでないのも面白かったですし、終盤の展開も映画とは違って、小説のが当初の構想に近いらしい。
 
カンヌ受賞もあってメディアの露出も随分増えた気がする深田監督ですが、小説家・深田晃司のデビューもちょっとした事件ではないかしら。

 
 
※イビツといえば「ここも?」って思ってしまう意外な箇所でのカタカナの多用。ちょっとご本人に意図するところをお聞きしたいです。
 
 
小説「淵に立つ」
https://www.amazon.co.jp/dp/459115145X/